アクチュアリーとデータサイエンス(1)

2019年7月28日

今日はアクチュアリー会の例会に行きました。

そこで「データサイエンスの成功事例」という演目の講演を聞きました。

お仕事の関係上で聞けなかった人に向けて、簡単に講演内容を紹介します。

講演で使われた資料はアクチュアリー会のWebサイトにアップされています。研究会員以上だとダウンロードできます。

ちなみに、昨今のAIブームを受けてなのか、日本アクチュアリー会は一昨年くらいからデータサイエンスに関連した講演を結構な頻度で設けていますね。

講演内容

講演は17時〜19時まで。聴衆は200〜300人くらいですかね。講師が外国人だったので同時通訳がありましたが、日本人には聞き取りやすい英語だったと思います。

講師は外国の生命保険会社のアクチュアリーです。データサイエンス部門のヘッドも兼任されてます。

講演の前半は「データサイエンスの概要」、後半は「保険ビジネスにおける応用」の紹介、最後に「成功への鍵およびアクチュアリーの役割」についてでした。

データサイエンスの概要

導入はよく聞くお話からでした。データサイエンスには、コンピューターサイエンス、数学・統計学、ビジネスの知識・経験の3つが大切というお話です。

いろんなところでよく聞く話なので、とくにコメントすることはないですが、講師の話し方からは、知識・経験が一番大事と言いたい感じでした。

次のお話は、今データサイエンスが注目される理由についてでした。「損保では予測モデリングでの成功事例が多数あり、生保より損保の方が進んでいる」というお話がありました。これは私自身も転職活動中に感じたことだったので、「せやね〜」って思って聞いてました。

保険ビジネスにおける応用

後半からは、保険ビジネス(主に講師の会社)におけるデータサイエンスの応用例の紹介でした。

講演で挙がったものからいくつか紹介します。

処方箋の履歴から、死亡リスクをスコア化

  • 個人の処方箋の履歴から、その人の死亡リスクを1〜100でスコア化する。
  • スコアは保険の引受査定で活用される。
  • 処方箋を一つ一つ確認するより、一つの数字で表した方が解釈しやすく、引受査定の時間も削減できる。

平準定期保険の解約率のモデル

  • 平準保険料式定期保険は、平準期間終了後に保険料が上昇するため、解約率が上昇する。
  • 保険料の上昇率と解約率の関係を定量的に把握し、商品設計に役立てる。

代理店の評価

  • 保険代理店の評価指標の簡素化、定量化モデルの開発により代理店の業績測定の正確性の向上を図るのが目的。

保険金の不正申請の検出

  • 契約者の職業や販売チャネルから、不正申請をする確率の高いグループと低いグループを作成。
  • 契約者を各グループに分ける。
  • 不正申請の確率が低いグループに属する人に対する損害調査は軽めにする一方で、不正申請の確率が高いグループに属する場合の損害調査は徹底的にする。

アクチュアリーの役割

講演の最後は、アクチュアリーの役割についてでした。

ものすごく簡単に書くと・・・

予測モデリングのプロセスではアクチュアリーがもってる専門知識が不可欠。そのため、アクチュアリーもモデリングのスキルと新しいテクノロジーの習得に取り組むべき。データサイエンスが保険やビジネスのあり方を変革する以上、アクチュアリーはデータサイエンスのチームに参画したり、チームを率いたりして変革をリードすることが役割となる。

感じたこと

現時点のデータサイエンスがアクチュアリーの従来業務と親和性が高くないことは、みんな薄々気づいていることだと思います。

だからと言って、アクチュアリーがデータサイエンティストを兼任する必要はないし、無理になる必要もないと思います。

講演の最後にある質問者(I先生)が言っていたように「アクチュアリーにとっての価値のある新しいデータサイエンスを作っていけば良い」のでしょう。

ただ、すぐに “新しいデータサイエンス” が生み出されるわけではありません。

当面の間は「アクチュアリーとデータサイエンティストがお互いのことを知って、仲良くなることが大切なんだろうな〜」と思います(←小学生なみ)